工業会の取組み

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間仕切の耐震性能についての考え方

可動間仕切・移動間仕切ともに建築を構成する非構造部材の一つとして捉えられる。
間仕切に作用する地震力の方向は水平方向と鉛直方向とし、
耐力上の検討は、日本建築学会『非構造部材の耐震基準』に準拠し水平1G(980gal) 鉛直0.5G(490gal)で行い、
構造部材の水平・垂直方向耐力や、接合強度などを確認する。

1可動間仕切Movable partition

可動間仕切は
①変形への追従性 及び ②耐力 の両面から耐震性能を検討する。

可動間仕切の場合、取付ける箇所によっては、建築非構造部材の天井及び床材となる場合が多く、
その場合は、その天井及び床材には耐震性能が十分確保されていることを前提として以後の設計基準を定める。

変形への追従性

可動間仕切は、全ての建築物に使用できるが、想定される建築物の変形=層間変位に対し面内、面外とも追従できる構造とする。

JIS A 6512:2007『可動間仕切』では、
可動間仕切が建築物の変形に対して耐え得る性能評価方法として、面内変形試験が規定されており、
要求性能として、想定される建築物の変形が高さの1/150の面内変形とし、使用上有害な割れ及びはがれがないこと、としている。
面内変形試験の方法は、引用規格である『JIS A 1414-2 建築用パネルの性能試験方法 5.9変形追従性試験』に準拠する。

〈試験の概略〉
パネルを試験装置に取り付け、下図の様に上部仮想駆体を、水平変位(L)とパネル高寸法(H)の比がθになるまで加力し、
その時の変形、破壊現象などを観察する。

層間変位角θ=L/H

JIS A 6512:2007『可動間仕切』では上記の通り層間変位角1/150が要求性能として規定されていますが、
『官庁施設の総合耐震・対津波計画基準及び同解説 令和3年版』では、
鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造では1/200の層間変位角(部材角)、
鉄骨造では1/100の層間変位角(部材角)に対し、
スライドなどによる目地等の損傷を生じさせない接合部とする。
面外方向にも追従し得る接合部とする。
とされております。
JIS基準1/150を超える層間変位角(部材角)への対応につきましては、各間仕切メーカーにお問い合わせください。

耐 力

水平1G(980gal) 鉛直0.5G(490gal)に対し、構造部材の水平・垂直方向耐力や、接合強度を確認する。

《天井接合部(図)の検討例》

地震時に水平1Gの加速度が間仕切に加わるとすると、 天井ライナー(笠木)で負担するのは自重Wの半分、1/2Wとなる。

  • 留付材の許容安全荷重(せん断)> 負担重量 であれば、OK

  • 単位長あたりに換算すると、

留付材は、天井の下地材料や使用するビスや専用金具により許容安全荷重も異なりますので、
天井材メーカー及び間仕切メーカーに問い合わせください。

地震時の安全確保のために

可動間仕切の設置にあたっては、地震時の安全確保の為、レイアウト、天井・床種類によっては別途補強が必要となる場合がございますので
建物管理者・所有者にご確認ください。

〈参考資料〉
ロックウール工業会発行『システム天井の間仕切ブレース補強ガイドライン(2020年版)』
※可動間仕切でも2重ガラスパネルなどは40kg/㎡超える単位質量の製品もあります。
〈関連リンクURL〉
ロックウール工業会
可動間仕切への家具の固定について

可動間仕切は非構造部材なので、収納家具など大型家具の固定には向きません。

〈参考資料〉
日本オフィス家具協会「地震に備えた安全なオフィスづくり」
〈関連リンクURL〉
日本オフィス家具協会

2移動間仕切Operable partition

『建築工事標準仕様書・同解説 JASS 25 ユニット類工事』(日本建築学会)および『公共建築工事標準仕様書』(国土交通大臣官房官庁営繕部監修)に 基づき、下記①~④の基準を計算・試験のどちらかの方法により確認し、水平方向の地震力に対し1Gの加速度に耐える耐震性能を有するものとする。 ただし、荷重はすべて短期荷重とする。

①ハンガーレール取付け下地の強度

走行部・格納部それぞれにおいて、取付け全パネル重量の5倍以上の重量に対し、パネル下端(密着材を除く)が床仕上げ面に接着しないこと、または、使用上支障のない耐力及び変形量となること。

②パネルをランナーに取り付ける部品の強度

ランナーに加わる重量の5倍以上の荷重に耐えられること。

③ハンガーレールの強度

ハンガーレールにランナーを取り付けた状態で、パネル重量の5倍の荷重を パネル1枚に使用するランナー数で除した値に対して、使用上支障のない耐力及び変形量であること。

④ランナーの強度

パネル重量の5倍の荷重を、パネル1枚に使用するランナー数で除した値に対して、使用上支障のない耐力及び変形量であること。

(一社)公共建築協会による「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」においては、
移動間仕切の評価試験に、「ランナー(吊り車、吊りボルト及びパネル接合部)の引張強度試験」が規定されており、普通パネル重量の5倍の荷重を、パネル1枚に使用するランナーの数で除した値以上の強度が要求性能とされています。同試験はハンガーレールを含めた試験体により、下図の通り上記②~④が試験確認できます。

また、 「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」では、別途「吊ボルトの引張強度試験」で1本にかかる荷重の15倍以上の引張強度があることを確認することとされています。

遮音性能を低下させる主な要因について

パーティションの現場実測値は、以下の①〜④などの影響により、カタログ値(パネル単体性能値)より
5〜15dB(/500Hz)低下します。また、以下の⑤〜⑦などの周辺環境の影響によりさらに低下する場合があります。
高い遮音性能をお求めの場合には、これらのことを含む様々な要因をご考慮の上、計画されることをお勧めします。

【遮音性能低下の要因】
  • ①間仕切ライン上の天井裏に遮音壁が設置されておらず、天井裏を音が伝わる
  • ②パーティションが取合う壁の裏を音が伝わる
  • ③部屋の扉を介して隣の部屋に音が回り込む
  • ④窓の防音性能が低く窓から隣の部屋に音が回り込む
  • ⑤空調ダクトが部屋を跨いで設置されており、ダクトを通じて音が伝わる
  • ⑥二重床の場合床下を音が伝わる
  • ⑦天井・壁・床の素材の吸音性が低く、音が反響して増幅してしまう

間仕切のガラスについて

改訂年月日「2014年4月」

  • 質   疑
    ① 地震発生時のガラスの外れや割れについて
    回答・説明
    ■ 間仕切のガラスに関する耐震性能
    間仕切のガラス納まりは板ガラスとサッシ枠のクリアランスに1/150 の層間変位を吸収できる配慮がされていますのでガラスが外れたり割れたりすることはありません。
    ただし、室内設備機器の転倒や飛来により、ガラスが割れる場合があります。万が一ガラスが割れた場合を考慮し、場合によっては合わせガラスを使用する、飛散防止フィルムを貼るなど、飛散の可能性をできる限り少なくし、被害を少しでも小さくするような配慮が必要と思われます。
  • 質   疑
    ② 開き戸開閉時の隣接するガラスの揺れについて
    ③ パネル寄り掛かり時のパネル揺れについて
    ④ パネルへの衝突について
    ⑤ ガラス板厚の選定方法について対応可能ガラス板厚について
    回答・説明
    ■ 間仕切のガラスに関する強度
    ガラスは一般に、サッシ、または枠にはめ込まれた状態で使用されますが支持辺の数によって分けて考えます。ここでは間仕切のガラス納まりより、4 辺支持及び2 辺支持について検討をいたします。
    各ガラスサイズ、板厚に対し許容応力の範囲内での選択とします
    発生応力が許容応力を下回っていることが重要ですが、不安感を与えないよう、たわみが大きくならないように板厚を選定することも重要です。(たわみ量に対してはガラス板厚内が望ましい。)
  • 質   疑
    ⑥ ガラスパネルの最大製作寸法について
    回答・説明
    各社製品仕様によります。
    強度については、間仕切のガラスに関する強度に準じます。
  • 質   疑
    ⑦ 突き付け連装ガラスの面数について
    回答・説明
    各社製品仕様によります。
    強度については、間仕切のガラスに関する強度に準じます。
  • 質   疑
    ⑧ 防火、耐火、不燃材の適合について
    回答・説明
    ■ 間仕切のガラスに関する防火性
    各ガラスメーカーの適合したガラスを使用してください。
    ■ 不燃材料
    平成12 年建設省告示第1400 号「不燃材料を定める件」により、「ガラス」は不燃材料とされています。
    ■ 特定防火設備
    ガラスについては告示の例示がないため大臣認定が必要です。
    枠メーカーなどが個別認定を取得しています。
    ■ 1 時間耐火間仕切壁
    ガラスについては告示の例示がないため大臣認定が必要です。
    ガラスメーカーなどが個別認定を取得しています。
  • 質   疑
    ⑨ 飛散防止フィルム貼りについて
    回答・説明

    ガラスフィルムはガラスに貼り付けることにより飛散防止を始め紫外線カット、省エネ効果、防犯性、デザイン性などの様々な効果を発揮いたします。ニーズに合わせた使い分けができます。地震などの自然災害、飛来物や人体の衝突等によりガラスが割れた時に破片が飛び散らなくなります。また、ガラス自体も割れ難くなります。ガラス破損時の安全対策としてお勧めいたします。

    ※強化ガラスは強度が高く、万一割れても破片が細かい粒状となり、安全性の高いガラスですが、ガラス表面の傷や、ごくまれにガラス中に残存する不純物の体積変化により、外力が加わっていない状態で不意に破損することがあります。
    強化ガラスに後貼りで飛散防止フィルム(デザインフィルムを含む)を貼ることで、細かな粒状の破片の飛散を防止できますが、破片がまとまって落下する可能性がありますので、用途に応じフィルム貼りには注意が必要です。

  • 質   疑
    ⑩ ガラスのクリアランスの基準について
    回答・説明
    間仕切製品のガラスののみ込み深さが浅く設定されている場合がありますが、可動間仕切のガラス納まりは間仕切壁の構成材の一つであり、ガラス枠以外の勘合部分でも吸収されるため、可動間仕切のガラス枠とガラスへの影響は緩和されるものと考えます。
  • 質   疑
    ⑪ ガラスの間仕切組み込み工法について
    回答・説明
    シール、ビード、ガスケットから新しい工法として接着工法によるガラスの組み込みがあります。
    シーリング材 シリコーン系 公共建築工事標準仕様書(建築工事編)
    グレージングガスケット   JIS A 5755 建築用ガスケット
  • 質   疑
    ⑫ ガラス保持力について
    回答・説明

    ガスケット納まりで開口よりガラス寸法が小さい場合に適用されます。(工業会参考試験方法) 内々1000mm のガラス枠に5mm 透明ガラスを固定し、中央部に490N(50kgf)を加圧し、ガラスが外れないこと。

  • 質   疑
    ⑬ ガラスビートの施工手順としてビートの入れ始め位置の基準について
    回答・説明
    一般的にはコーナー(角)から始めますが、各メーカーの仕様によります。